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2009年12月の一冊『十二歳』

2009.12.01

小学六年生の女の子の日常を等身大の目線で描いた物語

歳も暮れて参りまして、早十二月。今年は結局三冊しかご紹介できませんでした。(汗)
来年は倍増目指してがんばります。高校受験生は志望校を決定する時期にさしかかり、中学受験生は残り二ヶ月の追い込みが始まりました。師走の名の通り、走り回っている日々です。
さて、今回ご紹介いたしますのは、椰月美智子『十二歳』です。誰?という感じでしょうか。中学受験でおなじみの作家さんと言えば、重松清ですが、それに続く作家さんになるのではないかと私が密かに注目している一人です。

『十二歳』 椰月美智子 / おすすめ学年 小学5年生~中学3年生

十二歳といえば、小学校六年生から中学校一年生へと階段を駆け上がる年齢です。心身ともに大きく変貌を遂げるこの時期。考えていること、感じていること、体験すること。大人になってしまった今、いつしか美化されてしまったあの頃のみずみずしい日々を、小学校六年生の等身大の目線で書き上げた作品を見つけました。この作品は椰月さんのデビュー作ということで、荒さも目立ちますが、デビュー作ならではの、気持ちのこもった作品です。
主人公鈴木さえはポートボールが大好きな小学六年生。(ポートボールという響きすら懐かしすぎますが)友達と仲良くなったり、少し離れたり、ほのかな恋をしたり、友達の恋を応援したり。この物語の中で特別な出来事は起きません。小学六年生の日常が、小学生特有の盛り上がりを見せながら、不安定に進んでいきます。椰月さんが描きたかったのはきっとこの「不安定さ」なんでしょう。そして、さえは小学校を「卒業」します。その先も、さえが抱える悩みや、不安は変わりません。でも、さえは間違いなく「卒業」したのです。
人は生きていく中で、たくさんの卒業を繰り返しますが、すべての卒業はスタートラインでしかない。それを改めて感じさせてくれるそんな作品でした。

小学校高学年~中学生の女の子に是非読んでもらいたい作品でもあります。共感しながら読み進めて行くうちに、いつの間にか残りのページ数は少なくなっているはずです。
小学生の女の子が何を考えているか分からない、理解が出来ないというお母様、お父様。ご一読をおすすめいたします。思っているよりも大人で、また想像以上に幼い「十二歳」の姿をそこに発見できることでしょう。