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2009年9月の一冊『ステップファザー・ステップ』

2009.09.01

双子の継父となった泥棒のあったか~い話

またも更新が滞っておりましたが、久々にご紹介いたします。
今回ご紹介するのは宮部みゆきの『ステップファザー・ステップ』です。宮部みゆきといえば、『模倣犯』や『理由』などのミステリー小説が有名ですが、本作は小中学生でも入り込みやすい舞台背景と、何より魅力的な三人の登場人物の物語です。

『ステップファザー・ステップ』 宮部みゆき / おすすめ学年 小学5年生~中学3年生

両親がわけありで、同時に家を出てしまい、親不在の状況におかれた中学生の双子の男の子たち。事もあろうに雷の夜に双子の家の隣に空き巣に入ろうとした泥棒。残念ながら、雷に見舞われ、空き巣未遂に終わったところを双子に助けられます。双子は屈託のない笑顔を浮かべながら、ある条件をつきつけます。「僕ら指紋とっちゃった」「僕ら、二人の面倒を見ない?」「おとうさん!?」泥棒であることを黙っている代わりに、泥棒に父親代わりになることを求めます。「ステップファザー」とは継父のこと。
双子と主人公の泥棒のやり取りが面白く、つい引き込まれます。些細な事件から、大きな出来事が三人の周りで巻き起こり、それらを通して泥棒である「おとうさん」と「双子たち」が少しずつ絆を強めていく様子に、心をつかまれました。

いつか帰ってくるであろう本当の両親に気兼ねし、無邪気に慕ってくる「息子たち」との距離を置こうと思いながらも、「おとうさん」は、双子との生活にいつしかどっぷり浸かっていく主人公。

明るく軽い文体で、文庫本の表紙も『火車』や『模倣犯』のようなどす黒い色ではなく、内容に合わせて軽いものになっています。小中学生にも、お母様方にも読んでいただきたいお話です。受験も近づいてきて、空気が張り詰めてきた家庭にもこの一冊。心を温めましょう(笑)