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2011年11月の一冊『空へ向かう花』

2011.11.01

罪を背負った子どもとそれを囲む人々の暗く温かいお話

大変にご無沙汰してます。 約一年ぶりの更新ですね。子どもたちとその周りにいる大人たちに是非とも読んでいただきたい本に出会いましたので、ご紹介いたします。
著者は小路幸也。「東京バンドワゴン」シリーズで有名ですが、恥ずかしながら著者の本を初めて読みました。登場人物の描き方、心情の描写、物語の進め方など、細かい所に気が遣われていて、ストレートでありながら深く、重くなりがちなところを温かく、心に響く小説でした。

『空へ向かう花』  小路幸也 / おすすめ学年 小学6年生~中学3年生

《大人の意地を見せてやるって思った。大人ってすごいんだって、子供のためにこんなことをしてくれるんだって思わせてやる。二人が大人になりたいって思ってくれるように。》

お気に入りの一節です。
ビルの屋上から小学六年生の少年が飛び降り自殺をしようとする場面から物語は始まります。それを阻止しようとする同じく小学六年生の少女。この少女も辛い過去を背負っています。困難の中で生きる道を模索する二人は、奇縁で結ばれており、その周りを囲む大人たちが、二人を見守り、力になる。主な登場人物は四人。この少なさが、この小説の良さを引きだしています。魅力ある四人の登場人物が視点を変えながら、重いテーマに立ち向かっていく様子に引き込まれました。
生きること、罪や悲しみや苦しみを抱えながら、それでも生きること。そのために必要なことは何かを教えてくれる小説です。保護者の皆様方にぜひ読んでいただきたい本です。

いよいよ受験シーズンが近づいてまいりました。今年はどんな作品が出題されるかも気になります。定番の重松清(「くちぶえ番長」「きみの友だち」)、対抗の椰月美智子(「しずかな日々」「十二歳」)、出題数急上昇中の森浩美(「夏を拾いに」「こちらの事情」)、大穴の宮下奈都(「よろこびの歌」「スコーレNo4」)、 根強い人気の川端裕人(「今ここにいるぼくらは」)など、幅広い作家・作品から出題されます。ただし、中学受験の国語では、間接的な心情描写を如何に読みとるかが大事で、間接表現の巧みな作家が取り上げられているということは間違いありません。小学生の国語力を試すという点では、個人的には重松清や椰月美智子、佐藤多佳子など直球勝負の作家を出題してほしいですね。
でも、今回紹介した「空へ向かう花」。必ずどこかの学校で出題されます。(自信アリ)